イスラームと日本の冠婚葬祭 日本人ムスリムはどう対処すべきか?

日本人ムスリム共通の悩み

日本人改宗ムスリムにとって頭の痛い問題のひとつが日本での冠婚葬祭。結婚式は披露宴での食事も配慮してくれる事が多いのでまだいいとして、厄介なのは葬式だ。

 

多くの日本人が無宗教を標榜し、普段は宗教的に殆ど関心がないとはいえ、今だに仏式が日本人の葬式の主流である。

 

今回は日本人改宗ムスリムを対象に、そうした時の対処法をお話したい。

 

お役に立てれば幸いである。

 

主な対処法

1) 葬儀そのものに出席しない。

故人が友人や遠い親戚なら参列しないで弔電で済ませることもできる。

 

あるいは親族との関係が元々良くないのであれば逆にこの方法が逆に効果的ということもあり得る。

2) 先方に事情を話したうえで儀礼なしで参列のみ

相手に理解があれば遺族や葬儀社に事前に事情を話しておく。現在なら受け入れられやすいと思う。

3) 参列して儀礼を行ったうえでどうしても受けつけないと説明する。身内の場合はこれが一番効果的。

厄介なのは親族が保守的かつ親戚や地域の繋がりが強い場合。相手が参加しろとの一点張りで全く話が通じない場合である。

 

この場合効果的なのは最初の1回だけは誠意を持って参加する。

 

親の葬式だからだと周りに合わせて焼香をしたり拾骨をしたりする。

 

そうしたうえで『ごめんなさい。頑張ってやったけどどうしても受けつけないから次からは辞退させてください』

 

と頼むのである。

 

実際に私も母の葬儀の時に親だからと無理に焼香や収骨に参加したら気分が悪くなってしまい、周りから心配された。

 

流石に誰から見ても具合が悪そうだったのは明らかだったようで次回、父の葬儀の時には強制されることもなく、焼香や火葬場への同行もせずに参列することが可能になった。

 

その代わり、行政的な手続きや保険や年金、遺産などの整理や手続きは全部引き受けて介護や葬儀で疲れ切っている妹たちを支えた。

 

そういう形で僕なりの弔いをしたのだ。

 

最後に

最近は家族葬や宗教色を廃した葬礼も一般化しつつあり、日本人ムスリムの、ノンムスリムの冠婚葬祭に参加することへの抵抗も少なくなりつつある。

 

もしも自分自身が喪主に、それも改宗していない親兄弟の葬儀を執り行わなければならなくなった場合、直葬家族葬という選択肢がある。

 

イスラーム世界では自分のもとにいる異教徒が亡くなった場合は故人が帰属するコミュニティにお任せするのが一般的だが、そうした身元引受人が不在の場合はムスリムが行うジャナーザ(葬礼の礼拝)を行わずにそのまま埋葬するのが普通である。

 

ムスリム墓地をはじめ、土葬できる墓地の少ない日本では、同じような状況ではノンムスリムの故人を火葬にせざるを得ないとしても、この方法は有効と思われる。

 

大切なのは相手が誰であれ、たとえ儀礼に参加できなくても故人への敬意と周囲への誠意と配慮である。

 

同調や迎合ではない。

 

お互いの立場の尊重である。